No. 28 リサフランク420 / 現代のコンピュー / MACINTOSH PLUS

サフランク420 / 現代のコンピュー / MACINTOSH PLUS (2011年)
https://www.youtube.com/watch?v=cU8HrO7XuiE

インターネットの普及に伴い、誰もが簡単に音楽を作り、そしてアップロードすることが出来るようになりました。
従来のような、「レーベルがミュージシャンを選ぶ」という過程を踏む必要が無くなり、
「人に聴いてもらう」部分の敷居が下がる一方で、その量は一気に増えていき、
もはや収拾がつかなくなってしまっているのも事実です。

ゼロ年代初頭にインターネット上で話題になった"Vaporwave"という音楽ジャンルもまた、
そんなインターネットと音楽の混沌を象徴するものと言えるでしょう。

"Vaporwave"の特徴は、
1. 80年代頃のヒット曲のBPMを下げる
2. Windows98くらいの頃のアートワークを付ける

以上です。どういうわけか、昔のエキサイト翻訳っぽい謎の日本語をフィーチャーする楽曲も多いです。

このジャンルの代表的なミュージシャンであるVektroidは、膨大な別名義を用いて、一気にこのような楽曲を
ネット上に公開し、「この音楽が流行っている」感を出しました。

その結果、今回紹介している楽曲はダイアナ・ロスの楽曲をただスローダウンさせて軽くカットアップしただけなのに、
YouTubeで2000万再生を突破。当時のネット上では賛否両論の嵐となりました。

とはいえ、Vaporwaveの作品群に触れていると、不思議な心地よさを味わうことが出来るのも事実です。
「Web上の亡霊」とも言われるVaporwave、ハマると抜けられなくなりますよ。

No. 27 Straight Outta Compton / N.W.A

Straight Outta Compton / N.W.A (1988年)
https://www.youtube.com/watch?v=TMZi25Pq3T8

三連休の間、新しいヘッドホンでも買おうかとヘッドホン専門店を物色していたのですが、
未だに欲しくなってしまうのが「Beats by Dr.Dre」です。発売されてから結構な年月が経ちますが、
今でも街中で見ない日は無いといっても過言ではないほどの人気ヘッドホンです。

しかしながら、「Dr. Dre」が一体誰なのかは意外と知られていません。

Dr. Dreといえば、ヒップホップの歴史を語る上では欠かせない存在です。
彼がプロデュースしてきた作品は軒並みヒップホップの歴史に名を刻むレベルの名盤ばかり。
馴染み深いところでいえば、Eminemですね。彼の成功は、ドレーのプロデュース抜きでは語れません。
彼の歴史を辿るだけで、ヒップホップの歴史はある程度カバー出来るとさえ言われています。

そんな彼のキャリアのスタート地点が、1980年代後半に活躍したヒップホップ・グループ、N.W.A.です。
ヒップホップが定着した今でこそ、ヒップホップ=「酒!薬物!性行為!」といったイメージがありますが、
彼らはそういった、所謂ギャングスタ・ラップのルーツと言われています。

彼らが育ったコンプトンは当時の人種差別も相まって、犯罪率が最も高い街として知られていました。
N.W.Aは、そんな場所の"リアル"をラップすることで、豊かな世界に対して自分達の声を届けようとしたのです。
そんな彼らのトラックメイク/DJを担当していたのがDr. Dreです。
レコード・オタクだった彼が生み出した、遊び心に満ちた骨太なトラックもまた、N.W.Aの大きな魅力でした。

今では歴史的大傑作と言われる1st「Straight Outta Compton」はドレーのこんな宣言で始まります。
"You are now about to witness the strength of street knowledge."

No. 26 Star Guitar / The Chemical Brothers

Star Guitar / The Chemical Brothers (2002年)
https://www.youtube.com/watch?v=0S43IwBF0uM

昨日の園田君の日報で、スパイク・ジョーンズが紹介されていたのはご覧になられたでしょうか。
僕としては、スパイク・ジョーンズと聞くとやはり様々な名作ミュージック・ビデオを思い出します。
(Da Funk / Daft Punk, Drop / The Pharcyde, Sabotage / Beastie Boys, etc,,,)

MTVが全盛期を迎えていた90年代からゼロ年代初頭は、
ミュージック・ビデオがただのプロモーション・ツールではなく、
「短編映像作品」として考えられるようになった時代でもあります。

この時代、スパイク・ジョーンズを筆頭に、クリス・カニンガムジョナサン・グレイザーマーク・ロマネクといった
様々な映像作家がミュージック・ビデオという土俵で自身のクリエイティビティを炸裂させていました。
その映像は今でもYouTubeなどで普通に見られますし、今見ても十分に新鮮です。

その中でも、フランス出身の映像作家であるミシェル・ゴンドリーは、
「こんなことあったら面白いな..」というちょっとした遊び心を、実際に形にしてしまう天才です。
彼の作品は、常に音楽好きや映像好きを「よくこんなの撮ったな..!」と驚かせてきました。

ところで僕は電車や新幹線に乗る時、移り変わる景色を車窓から眺めているのが好きなのですが、
その時よく、車窓の端から端を電柱などが横切る際、頭の中で「カーン」という音を鳴らして、
適当にビートを刻んで遊んだりしています。綺麗にリズムが決まる瞬間もあってなかなか楽しいものです。

このエピソードに共感してくれた方は是非、上記のリンクから、
彼の最高傑作とも呼ばれる"Star Guitar"のMVを御覧ください。初めて今作を観た時、僕は震えました。

No. 25 True Colors / Zedd

"Let me show you my true colors, it ain't no rainbow./
虹色では表現できない、私の真実の色を見せてあげる。"

https://www.youtube.com/watch?v=QYGdLMf9hzM

「容量の制限がなくなり、選択肢が増え、時間がなくなった」時代において、
「アルバム」という概念はもはや時代遅れのものであるといえるのかもしれません。

約1時間もの間、ミュージシャンの制作物に向き合うという行為は、
ある意味では芸術作品とじっくり向き合う時間へと変わったように感じます。

特に消費が前提とも言えるEDMにおいては、アルバムに価値を見出そうとするDJはそれだけで貴重な存在であり、
ただアルバムを出すだけでは聴いてもらえない現状に対して、様々な施策で戦おうとしています。

2015年、EDM界のトップDJの一人であるZeddが、2ndアルバムの"True Colors"を発表する際、
彼は全米から収録曲数と同じ11箇所を選び、それぞれの場所で宝探しゲームを実施。
ゲームに勝った50名を特設会場に招待し、各地で1曲だけの限定試聴会(超金かかってます)を開催しました。

その様子は特設Webサイト及びYouTubeで順次公開され、最後の11箇所目として選ばれたニューヨークでは、
なんと試聴会をEmpire State Buildingで開催。
その際、ビルのライティングを音源と同期させ、その模様をミュージック・ビデオとして公開しました。

「アルバムの1曲ずつにしっかりと目を向けてもらう」ためのこの施策。「ここまでやらないといけないのか..」とも
感じますが、ストリーミングの時代だからこそ、このようなアプローチが生まれるのかもしれません。

No. 24 Blue Monday / New Order

"Tell me how do I feel. / 俺がどう感じればいいのか教えてくれ."

https://www.youtube.com/watch?v=SVkq8IEO4tc

インターネット上で音楽を聴く事が当たり前となった現在、レコードやCDで音楽を聴くリスナーは
もはやマイノリティと言っても過言ではありません。
握手券などが広がっていった辺りから、フィジカルの価値は「音楽を聴く媒体」から、「ファンアイテム」へと
変化していったように感じています。

しかし、視点を変えてみれば、フィジカルを手に取るのは、そのミュージシャンへの信仰心が高い人々であるとも
言えるわけです。だからこそ、最近では手の込んだパッケージでフィジカルを発表するミュージシャンも増えています。

僕としても、アート作品としてのフィジカルに魅力を感じているからこそ、
未だにフィジカルを買い集めているように思います。聴くのであればデータの方が絶対便利ですから。

僕が愛してやまないゾンビ映画に「ショーン・オブ・ザ・デッド」というものがあります。
この映画の中で、自宅に襲いかかってきたゾンビ達を、主人公が友人と一緒にレコードをブーメランのように投げて
撃退する場面があるのですが、

その際、緊急事態であるにも関わらず「それ初回盤だからやめろ」と言って友人を止めたのが、
New Orderの"Blue Monday"です。不朽の名曲であると同時に、パッケージの特殊印刷に凝りすぎて、
「1枚売れるごとに2ペンス赤字になる」という資本主義を完全に無視した仕様も話題となりました。

彼の気持ちは痛いほど分かりますし、もしも僕が同じ立場だったら、同じように迷うと思います。
それにしても本当にレコードって良いですよ。見ていて楽しくて、音も良くて、しかも武器になるんですから。

No. 23 でも・デモ・DEMO / 暗黒大陸じゃがたら

"あんた気に食わない!"

https://www.youtube.com/watch?v=PS46C2c5iPQ

70年代から80年代にかけて、アンダーグラウンドを中心に盛り上がりを見せた日本のパンク・ロックシーン。
以前ご紹介したTHE STALINを筆頭に、INUあぶらだこアナーキーといったバンドが
過激な言葉と音とパフォーマンスを武器にライブハウスを席巻していました。

彼らの多くはSex PistolsThe ClashといったUKパンクに多大な影響を受け、
誤解を恐れずに言えば、そのサウンドを模倣した上で(特に言葉において)日本人としての
オリジナリティを追求していたとも言えます。

そういった文脈とは一線を画するのが、今回ご紹介する暗黒大陸じゃがたらです。
まずはその独特すぎるバンド名に目が行きますが、独特なのは名前だけではありません。

パフォーマンス目当て、物珍しさで集まってくる観客にウンザリした、中心人物の江戸アケミ。
「音楽性で評価されたい」と思い立った彼が選んだのは、パンク・ロックとアフロ・ファンクの融合でした。

弦楽器の切れ味やボーカルのテンションはパンク・ロックそのもの。
しかし、そこに絡み合うリズムやホーンの音色はファンク・マナーを徹底しています。
そのサウンドの鮮烈さに、それまでの色物的評価は一気に覆りました。

1982年に発表された1st「南蛮渡来」の1曲目を飾る「でも・デモ・DEMO」は、その極地とも言える仕上がりです。

江戸アケミの「あんた気に食わない!」という一言と共に、一気に凶暴なファンクの渦へと雪崩込むイントロ。
混沌としたグルーヴの中で繰り返す「くらいね、くらいね」というコーラス。
そしてグルーヴが完成した後に畳み掛ける排他的な言葉の数々。

リリースから35年が経った今でも、そのサウンドは鮮烈に響きます。

No. 22 紳士服売り場 父の日ギフトコーナー / Tukuru

"ジャスコテック=JUSCO TECHについて"
https://soundcloud.com/tukuru/korg-m01d-1

先日、同期とのランチ中に「自宅のテレビは大学時代にイオンで買ったもの」と発言したところ、
「イオンでテレビって買えるの?」という非常に屈辱的なフレーズを返されました。買えます。

イオンモールといえば、郊外の象徴であり、地方の象徴であり、地元の人々にとってのテーマパークです。
週末になると小中学生たちは自転車を漕いでイオンに向かい、ゲームや映画を楽しむのです。
そして子どもたちは育ち、やがてイオンで服や食器を買うようになり、イオンでアルバイトをするようになります。
彼らに恋人が出来た時、デートに選ぶ場所はもちろんイオン。彼らが結婚し、オムツを買う場所もイオン。
イオンを中心に人生は巡っていきます。僕が小学生の頃に通っていた野球場も、今ではイオンになりました。

地元・宮城の友達は、今でも利府ジャス(イオンモール利府店)や富ジャス(イオンモール富谷店)を
中心に生活しています。

しかし、僕は地元を離れ、東京で生活をすることを決めました。
上京して、家具や食器や衣類を買い揃えていた時、
僕は初めて、全てがイオンで完結することの素晴らしさを噛み締めました。

気がつけば、もう3ヶ月以上もイオンに行っていません。時々、そこに寂しさを感じることもあります。

そんな時に聴くのが、「ジャスコで流れてるっぽい音楽にビートを乗せた新しいダンスミュージック」である、
ジャスコテック(JUSCO TECH)という音楽。

一部のクラブ愛好家の中で密かに人気を集めているこのジャンル。
実はイベントも開催されており、その最高峰でもある「Tokyo Jusco Night」は今年の4月で12回目を迎えました。

聴くたびに、ユニクロと本屋の袋を片手に夕食の食材を選んでいたあの頃の気持ちを思い出します。